20年前不登校だった私が体験談を語るブログ

「行きたくない」を「生きたくない」に置き換えて

『犯罪者 -クリミナル-』太田愛 読書感想文

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通り魔殺人の陰に潜む
企業と政府ぐるみの大きな隠蔽工作
その真相を白日のもとに晒そうと
小さな力が集結奔走する物語

大企業と政治家の癒着や
保身に走る人々が生々しく描かれており
社会では実際にこのようなことが行われているのだろうなと確信に近い想像をしてしまう

作中で「この人は死んで欲しくない」と感じる人が容赦なく命を落とすためなんとも救われない気持ちになるけれど、その分残された者たちによる勧善懲悪的な後半部のコントラストにほっとする

また、伏線の張り方がとてもさりげなく
ラストに二転も三転もするような振り幅が大きな物語の展開に反して、ごく自然というか何というか、常識的と感じるほどに
実に丁寧に筋書きが練られており
その技術にただただ敬服するばかり

太田愛さんの作品は現在3作出版されており
いずれの作品も同じ人物達が主役で
出版の時系列に沿って各々の成長した姿が描かれている

私はこの事を
2作目の『幻夏』を読み始めるまで気付かず
天上の葦→幻夏→犯罪者
と、新しい作品から読み始めたため
天上の葦と幻夏の登場人物の過去を思わぬ形で知れた気がして、とても感慨深い思いでした。