20年前不登校だった私が体験談を語るブログ

「行きたくない」を「生きたくない」に置き換えて

『絶叫』葉真中顕 -読書感想文-

自宅での孤独死後、発見が遅れたことから飼い猫10数匹に亡骸を食べられ、死因や個人が特定できない程の姿になって発見された鈴木陽子という女性の一生と、孤独死に不自然さを感じ彼女の生きてきた痕跡を辿る女性警官の物語

主人公である鈴木陽子が私と同年代である事、私の旧友と同姓同名である事に不思議な縁を感じながら読み進める

孤独死に始まり、NPOを称した団体によるホームレスの生活保護囲い込み、生活保護そのものに対する様々な見解、ブラック企業、派遣労働、貧困、風俗産業への転落、虐待、DV、買い物依存、アダルトチルドレン

不謹慎ではあるが、私の最も興味がある「現代が抱える社会問題」のフルコースがこれでもかと詰め込まれており、それらの社会問題が顕著になってゆく過程の環境や心理状態を丁寧に描く中で、著者は読者に対し重苦しい課題を問うているように感じた

それはまるで、ミステリー要素を含んだ『現代版・嫌われ松子の一生』のよう

社会問題に触れているとはいえフィクションはあくまでフィクションだから参考にならない、との意見を耳にすることがあるが、私は社会の事象に裏打ちされた物語に関しては、細部は異なれど十二分に知識や想像力を深める機会になるのではないかと考える

また、一人称視点・二人称視点と切り替わりながら二転三転する入念に練られたストーリー展開は、大変面白く読みやすいものだった

そして、ラスト30ページ、更には最後の4行でまさかまさかの展開に

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余談ですが、葉真中顕さんて「はまなか けん」だと思っていたのですが、「はまなか あき」だったのですね